キャンバス、レイヤーの背景を緑色にすると眼の疲れが軽減するのか?

2020年4月14日ディスプレイ

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昔から液晶ディスプレイを見ていると眼が疲れてしまうというコメントを見かけるとうことがありました。最近は、液晶タブレットで直接画面を見ながら絵を描くというのも増えているので画面に近づいたため余計に眼に負担がかかっているのではいかと思います。

最近、Twitterでキャンバスの初期背景を「緑色」にすることで眼の負担が軽減出来た気がするとの記事がありました。

キャンバスを緑色の背景にすることで何故眼の負担を軽減出来るのかを調べてみました

目次

まとめに行くまでが長いです。

何故?眼が疲れてしまうのか?

一般的に眼が疲れるというのは眼のピントを調整する水晶体の周りにある毛様体筋という筋肉が緊張で伸びたままになったり、伸び縮みを繰り返したことによって疲労が蓄積している状態を指します。
液晶タブレットは画面が近くになっているため長時間見ながら絵を描いていると毛様体筋が伸びたままとなり、筋肉に疲労が蓄積されていくため疲れ目が起きやすくなります。
絵を描いている・・・サークル活動をしていると長時間の作業や睡眠不足も起こりうるので眼が余計に疲れやすくなります。本当は疲れる前に眼を休めることが大事です。

後は瞳孔のサイズを調整するのに、瞳孔を縮める瞳孔括約筋と、瞳孔を広げる瞳孔散大筋という筋肉があります。
瞳孔のサイズは主に明るさが変化することで変わるとされています。
明るさが絶え間なく変化するような環境に居ると眼に対しての負担が増えていきます。

色度と波長によるエネルギーの違いとは?

緑色だと本当に眼が疲れにくいのかという話の前に人が見えることが色の範囲を可視光線領域と言います。
可視光線領域を波長として表すと380~780nmになります。波長だけだとどのような色かわかりづいらいと思いますので下図に表します。

眼が疲れにくいと言われている緑色は波長で表すと大体555nmになります。(LED色だとPure Green等と呼ばれています。)

次に波長ごとに人が感じることの出来る光の強さを表したもの(視感度曲線)があります。割合が大きいほど、人は強い光を受けていると感じます。
ちなみに明るい場所(青色線)と暗い場所(緑色線)で光の感じ方には違いがあります。

普通に作業をしている部屋は明るいと思いますので青色のグラフで話を行います。このグラフを見ると明るい場所では「緑色の555nm(赤線)」が最も人が明るいと感じる場所になります。
(暗い場所に移動すると徐々に暗所比視感度に近づいていきます。)

明るく感じるのは眼に入ってくる刺激が大きいということになります。しかし、視感度曲線は心理物理的な明るさなので物理的な光の強度(エネルギー)とは別になります。

波長ごとの光強度(エネルギー)を分光分布特性で表現すると下記のようになります。
分光分布特性についてはプランクの放射式を用いて算出をしています。プランクの放射式は黒体を加熱した際に輻射される電磁波(波長)を表したものです。


波長ごとに放射されるエネルギーは黒体の絶対温度(K:ケルビン)によって違います。
黒体の温度が上がるほど青色波長のエネルギーが増大をしていきます。


波長555nmを「1」として他の波長から出力されている割合を計算しました。
ここから解ることは温度が高いほど、青色成分が多く、温度が低いほど赤色成分が多くなることがわかります。

温度ごとに放出されている黒体の放出光を色度座標(x、y)にして表すと上図のようになります。黒体の絶対温度が上昇すると光の色が赤⇒黄色⇒黄白⇒白⇒青白⇒青という順に変わっていきます。
黒体からの放出光を色度座標に表した際の色の軌跡を黒体軌跡と言います。


黒体は理想上の物体であり、黒体軌跡で表現されているほどの温度でライトは光っているわけではありません。そのため一般には相関色温度という黒体軌跡に近しい色で白色光を表しています。
しかし、実際には黒体軌跡の通りの色度を実現することは出来ないので黒体軌跡に近い色度範囲というものが ANSI C78.377いう規格で決まっています。

PCの一般用途やsRGB規格では6500Kの色温度が基準となっています。印刷業界でも一般的には5000Kや6500Kの色温度が使用されています。そのため、ディスプレイのキャリブレーションソフトでも白色点をD65(色温度6500K)とかD50(色温度5000K)に合わせてキャリブレーションを行います。
相関色度から考えると、5000Kや6500Kは青色成分の波長が強い色度となっており、青色成分が多いほど放射されているエネルギー量が多くなります(黒体放射の放射エネルギーより)。

一旦まとめると、色温度が高くなるとRGBの色を調整するため青色成分が多くなり、放射されるエネルギー量が多くなります。実際に青色波長によるエネルギー量が多いと、眼にどのような影響が出てくるのかについて記載をしていきます。

青色波長は眼にどのような影響があるのか?

青色成分が多いと放射されているエネルギー量が多いと記載をしました。
しかし、青色成分が多い場合には何か問題があるのかという疑問が浮かびます。

一昔前にブルーライトが眼に影響を与えるということで話題になっていたかと思います。青色の波長は眼に良くないのでブルーライトをカットするための眼鏡やPC用のソフトウェアも販売されています。
ブルーライトについてはブルーライト研究会というものがあり、ブルーライトについて色々と記載されています。しかし、疾患リスクを調べるための臨床データもまだ無いのでブルーライトが人体へ本当に影響があるのかについてはまだ結論が出ていないようです。

ブルーライト研究会
http://blue-light.biz/

とりあえず、青色成分の波長が眼の疲れに関する部分について記載をしていきます。
一番最初の「何故?眼が疲れてしまうのか?」にも記載をしましたが、毛様体筋という筋肉を伸縮させすぎたり、瞳孔括約筋と、瞳孔散大筋を使うことが原因で眼に疲労がたまります。

この毛様体筋と瞳孔括約筋、瞳孔散大筋が青色成分の波長(ブルーライト)とどのように関係してくるのかを下記に記載します。まず、各筋肉が伸縮する場合として

  • 眼のピントを調節する場合(近くや遠くの物を見たりする場合など)
  • 眼に入ってくる光の量が変化した場合(部屋の明るさや画面の輝度が変わる場合など)

が考えられます。同じ場所を見ていれば眼はピント調整をする必要はありませんので毛様体筋が動くことはありません。
しかし、眼に入ってくる光が変化した場合、瞳孔の筋肉が動き瞳孔の開いている大きさが変化するため眼の負担になります。
同じ環境にいたとしても常に明るさは変化しています。明るさが変化する要因としては考えられるのは、

ディスプレイなどの機器自体のリフレッシュレートなどによる画面のチラつき
ディスプレイは同じ映像を映していても常に画面が更新されています。その時に輝度が変化するために瞳孔の大きさが変わり眼が疲れるといった場合もあります。波長とは特に関係はないので割愛します。(フリッカーフリーというディスプレイがチラつきによる疲れ眼を抑制してくれます。)

画面の内容が変化することによる画面から出る放射エネルギー(光)の変化
画面が静止状態であれば画面から出ている光は同じなので眼に対する変化も変わりませんが、画面を動かすことによって画面から出る光が変わります。
光エネルギーを簡単に求める方式として下記のものがあります。


光速、プランク定数は一定のものなので光エネルギーは波長に依存します。
つまり波長の短いほど光速を割る母数が小さくなるので青色ほどエネルギーが多くなります。
E:エネルギー[J]、c:真空中の光速[m/s]、h:プランク定数[Js]、λ:真空中の波長[m]、v:振動数


式を計算するとこのような結果が出てきます。


380nmを100%として可視光範囲のエネルギー割合を計算すると780nmでエネルギーは48.7%まで計算上低下します。
つまり同じ画面輝度設定でディスプレイを見ていても青色は赤色の約2倍のエネルギーを出していることになります。(555nmだと68.5%)
視感度曲線から青も赤も同じエネルギーであれば人の明るいと思う、感じ方は大きくは違わないため、エネルギー量の多い青色を見ると眼は明るいと感じて瞳孔の開きを狭くします。
極端に言えば青と赤の画面が交互に入れ替わると放出されているエネルギーの量は変化するため、眼はたえず瞳孔の大きさを調整することになります。

青色の波長が眼に与える影響についてですが、青色に近づくほどエネルギー量が多くなるため無意識ですが眼は明るいと感じており、逆に赤色に近づくほど眼は暗いと感じています。
その結果、明るさの違いが発生するため瞳孔の筋肉は動く量が大きくなり眼に
疲労がたまると考えられます。(瞳孔を小さくするのに筋肉を伸ばす必要があるので疲れが出やすい)

青色よりも緑色の方が良い?

青色と緑色だったら緑色の方が明るく感じるのでは?という疑問はまだここでは残っています。
上に色々と書いてありますが、エネルギーとしては青色の方が緑色よりも多いですが、エネルギーの量と比視感度を合わせて考えると緑色の方が人は明るいと感じるようになっています。

緑色の方が明るく感じているのであれば眼に対する負担としては青色よりも緑色の方が多いように考えます。
色々と調べましたが青色が緑色よりも眼に悪いとする結果が今のところ見つかっていません。

眼に対するものでなければ、青色の波長を浴びすぎると体内時計に影響があるとか、寝付きが悪くなって翌朝の目覚めが悪くなるといった翌日に体に影響を与える件については示唆されているようです。
眼に関することとしては青色が緑色よりも悪いという点については現状不明です。

スネルの法則で説明がつくのか・・・どうか

複数のサイトで青色の波長は空気中にある元素と衝突することでレイリー散乱という光の散乱が起きやすいため眼に対する光のチラつきや像がぼやけるといったことが発生しやすいので青色の波長は眼の負担となっていると記載されていたりします。
しかし、20~30cmの距離で眼が分かるほどの散乱が発生しているのであれば、青色のレーザーなどはすぐに発散してしまうのではないかと思います。太陽光が大気を通過する位の距離があってレイリー散乱の効果が出てくると考えます。

何故赤よりも緑の方が良いとされているのか?

プランクの放射式や光エネルギーの計算から考えると緑色よりも赤色の方が放出されているエネルギー量は少ないので眼に対する負担は少ないと考えられます。
しかし、視感度曲線と組み合わせて考えると赤色よりも緑色の方が人は明るく感じやすいと捉えることが出来ます。
では、何故キャンバスを赤色にするよりも緑色にした方が目に優しいと感じるのかということになります。

一つ考えられることは明るさとは心理的な物理量(人の見た目)で決まっているため、心理的な動きが加わっていると考えます。
色彩心理学では赤色を見ると「興奮」し、緑色は気持ちを「鎮静」させる効果があると言われています。これが赤色よりも緑色の方が疲れないと思う理由ではないかと考えます。

まとめ

    • ディスプレイを見たときに眼が疲労するのは瞳孔の筋肉が動くため
    • ディスプレイは通常6500Kまたは5000Kが標準とされており白色のキャンバスを
      設定している場合、青色の成分が多くなってくる。
    • 波長に対しての光エネルギーが多い順番は青色ー緑色ー赤色(エネルギー的に)
    • 実際に人が見た場合に明るいと思う順番は緑色ー青色ー赤色
    • 青色よりも緑色の方が眼に良いと考えられる理由は現状不明
      体に対しては体内時計への影響、寝付きが悪くなるなどが示唆されている。
    • 赤色よりも緑色のキャンバスの方が疲れないのは色彩心理学的にリラックするため
      興奮状態になることで筋肉が緊張しやすくなる。

色々と長く書いてしまいましたが私の結論としては緑色のキャンバスよりも若干、「青色よりの緑(空色)」または「黄色よりの緑色」が心理的にも眼にも負担が少ないと考えます。

補足


ディスプレイのバックライトとして使用されている、白色LEDの波長ごとの相対発光強度は6500Kだと大体このグラフのようになっています。
波長としては青色がピークとしては確かに大きくなっていますが、グラフ全体を積分して各色ごとの
割合を見た場合は下図のようになります。

紫色(380-450nm)18.4%
青色(450-495nm)9.7%
緑色(495-570nm)36.5%
黄色(570-590nm)10.4%
橙色(590-620nm)11.9%
赤色(620-750nm)13.0%

色ごとの割合を見ると緑色が突出して多くなっています。ディスプレイのバックライトとして使用されているLEDは白色なので青よりの緑色、または黄色よりの緑色にすることで眼の負担を軽く出来るのではないかと考えます。

参考

疲れ目のしくみ(参天製薬 株)
https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/selfcheck/eyestrain/index2.jsp

虹彩と瞳孔の不思議(参天製薬 株)
https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/eyecare/wonders/iris.jsp

Colour & Vision Research laboratory
http://www.cvrl.org/cie.htm

色彩と目の疲労
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jieij1917/46/10/46_10_460/_article/-char/ja/

東京大学 生産技術研究室 志村研究室(光学)
http://qopt.iis.u-tokyo.ac.jp/pub/index.html

http://qopt.iis.u-tokyo.ac.jp/optics/10radiometryU_A4.pdf

温度放射の波長について(ヒートテック 株)
http://www.heat-tech.biz/products-hph/hsh-gj/hsh-gj-hhn/hsh-gj-hkb/1709.html

照明光の色味 ・・・ 色温度 と 相関色温度 ・・・(シーシーエス 株)
https://www.ccs-inc.co.jp/museum/column/light_color/vol33.html

そもそも「色」をなぜ「温度」で表すのか?(EIZO 株)
https://www.eizo.co.jp/eizolibrary/other/itmedia02_05/

初期視覚メカニズムと瞳孔反応
http://www.visionsociety.jp/vision/vol20-3/VISION200302.pdf

提示画面の輝度変化と画像内容による瞳孔面積変化
https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej1978/44/3/44_3_288/_pdf/-char/ja

京都大学 下田研究室(眼疲労の客観的検査方法に関する研究)
http://hydro.energy.kyoto-u.ac.jp/wp/
http://hydro.energy.kyoto-u.ac.jp/publication/files/1016/PAPER_PDF/kondo.pdf

可視光の波長別エネルギー
https://www.j-eye.com/001_014/blue/f10174bl23.html

2色配色に対する心理的及び生理的反応
https://ci.nii.ac.jp/naid/110001826407/

ブルーライトの目への影響 結局のところどうなのか?
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO38874500T11C18A2000000/

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