【CLIP STUDIO PAINT】ペンタブ手ブレ補正設定について

デジタルイラストはアナログイラストと違いソフトが色々なことをサポートしてくれる機能が豊富に盛り込まれています。その中の機能のひとつに、手ブレ補正というものがあります。
手のブレを抑えてくれますが、実際にどれくらいの効果があるのか目に見えづらいので、本記事では数値ごとの効果を比較してます。
特にデジタルイラストを描き始めたばかりの初心者は数値をどれくらいに設定をしてよいのか迷うこともあると思いますので、「これくらいが良いのでは?」という値も書いてます。
- 手ブレ補正の数値を大きくすると、描画遅延が発生する。
遅延を少なくしたい場合は、補正値を可能な限り少なくする。
手ぶれ補正0が最も遅延が少ない - 手ブレ補正値を20くらいにすると、手ぶれ補正効果が出てくる。
- 遅延した線を目で追いながら、作業をすると、作業スピードが遅くなるので注意が必要。
手ブレ補正とは
手ブレ補正とは、イラストソフトにだいたい標準である機能の一つです。
線を描く時にどうしても人の手が少しブレてしまうのをソフト側で補正を行い、本来はあるはずのブレを抑制する機能になります。

クリップスタジオペイントなら「ウィンドウ」⇒「サブツール詳細」⇒「補正」の中になる、「手ブレ補正」と「速度による手ブレ補正」の項目があります。手ぶれ補正の数値を大きくするほど、手ブレを抑制しやすくなります。
下図にクリップスタジオペイントのGペンで手ブレ補正の数値を変化させた場合の「手ブレ補正」の効き具合を自作ソフトを用いて比較しました。
赤色の線から青色の線が離れているほど、手ぶれ補正効果が効いています。
- 手ぶれ補正100は波線(赤色)がほぼ水平(青色)になります。
- 手ぶれ補正50は波線が少し水平に近づきます。
- 手ぶれ補正20は波線に近い形状で少し補正がかかります。
- 手ぶれ補正10と0は殆ど補正効果が出ていません。

- ペンタブレットで描画しているときのペンの座標を自作したソフトで記録(ペンの移動については手動で行っています。)
- ペンの通った座標をソフトで再現して描画
- ペンタブレットとソフトで描画したものを比較し手ブレ補正がどれくらいかかっているのかを見れるようにしました。
手ブレ補正100や50は補正がある状態では滑らかな線となっていますが、補正がない場合は波を打ったような線になっています。補正された線は大体、波の中間くらいを通った線になっています。
補正値が小さくなるほど、補正ありと補正無しの線の差が小さくなってきます。補正10あたりからは殆ど補正がありません。
注:マウスで描いている場合は、入力機器をペンとして認識されていないため手ブレ補正は反映されません。
手ブレ補正の注意点
手ブレ補正の数値が大きくなるほど手ブレを抑制することは出来ますが、手ブレを抑制するためにソフト側での処理時間が必要となってくるため描画遅延が徐々に大きくなっていきます。
下記に手振れ補正を値を変更した場合の遅延時間を比較してみました。
「開始位置」~「終了位置」までペンを移動させた時に画面に反映されていた部分(線)までを比較しています。
- 「開始位置」~「終了位置」までのペン移動時間は0.564±0.022秒です。
- 遅延時間は□マス1つあたりを移動するのに約0.011秒で計算してます。

補正値ごとの描画速度、手動描画なので、タイミングについては完璧に合わせることは出来ませんでした。
手ぶれ補正によるペン先からの遅延時間

手振れ補正100で約0.165秒の遅延が発生しています。
手振れ補正0でもペンのカーソル位置と描画位置にズレが生じていました。
クリップスタジオペイントが処理をするまでに通過しなければならない他の処理があるため、どうしても描画に遅れが発生していると考えられます。
上図の遅延時間はWindows10内部での処理のみを表示しているため、実際のペン先とは更にズレが発生します。(デスクトップキャプチャした記録を元に確認を行っているため、内部の処理までしか反映できません。)

他の描画遅延要因として考えられるものはペンタブレットデバイス自体の処理時間やディスプレイの応答速度などによって発生します。
遅延が気になりやすい液晶ペンタブレットのディスプレイ応答速度を調べてみたところ下記のようになっていました。
- Cintiq Pro 13で30ms
- Cintiq Pro 16で25ms
- Cintiq Pro 24で14ms
- Wacom oneで26ms
- XP-Pen Artist 13.3、22,24 Proで14ms
液晶ペンタブレットによって応答速度には様々です。
なお、0.03~0.04秒の時間があれば人は変化を知覚することが出来るそうです。ペンタブレットでの場合は知覚より動体視力になっていると下記の記事には少しだけ記載されてます。
[CEDEC]脳の動作クロックは33Hz? 人間のスペックに適合させたゲームの遅延対策とは
https://jp.gamesindustry.biz/article/1909/19090502/
手ブレ補正の設定について
上述の通り、手ブレ補正の数値を大きくするほど、補正をするために処理の時間を要してしまい、手ブレを補正するための処理時間が長くなるので遅延か出ます。
遅延が発生すると、遅延した分だけ待機をする時間も増えてしまうため、結果として作業スピードが遅くなります。
待機による待ち時間を減らして作業スピードを上げるということであれば、手ブレ補正は思い切って「0」にしてしまうのが良いと考えます。
その代わり、補正がないため、手ブレが線に出てしまうので、ある程度はペンを上手に動かせるようになっておく必要があります。
流石に、手ブレ補正の値を「0」にするのは現実的でない場合もありますので、今回の結果から考えると、手ブレ補正の数値は「20以下」の範囲で設定をするのが良いのではないかと考えます。
手ブレ補正「10」だと殆ど手ブレが効いていないため効果を実感出来そうにありません。「20」だとやや効果を実感出来ます。
また「20」以上になると遅延が大きくなるため、描画による待機時間が増加してしまうため作業スピードが落ちてしまいます。遅延がこれ以上大きくなると、違和感が大きくなります。
最後に、想定ですがクリップスタジオペイントは手ブレ補正のバー均等に割っていないので、低い数値での手ブレ補正を推奨しているように見受けられます。手ブレ補正の値「10」前後を想定していそうです。
まとめ
- 作業スピードを考えるなら手ブレ補正の値は「0」にする
- 手ブレ補正の値を大きくするほど、遅延が発生する。
- 手ブレ補正の値は「20以下」が良い
- 遅延した線を見ながら作業をすると作業スピードが落ちる
線を描くことに慣れてきたら徐々に値を小さくして行くと良いかもしれません。

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