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イラストの解像度でもう迷わない!Web・印刷・漫画の「最適設定」と理由【早見表あり】

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デジタルイラストを始めたばかりの頃、キャンバス設定で最初に悩むのが「解像度(dpi)」ではないでしょうか?

「Web用は72dpi?」「印刷は350dpi?」 教科書通りに設定しているその数値には、実は「印刷の仕組み」に基づいた明確な理由があります。

この記事では、目的別の「正解」となる解像度と、なぜその数値なのかを分かりやすく解説します。

記事の後半には、「A4・B5サイズのピクセル数早見表」も用意しましたので、設定時のカンニングペーパーとして活用してください。

結論:迷ったらこの数値!目的別・解像度早見表

理屈は後回しにして、まずは「この数値にしておけば失敗しない」という目安を紹介します。

目的推奨解像度(dpi)理由
Web・SNS投稿dpiは不問(px数で管理)表示はpxで決まり、dpiは“見た目”にほぼ影響しないため
カラー印刷
(表紙・イラスト集)
300 ~ 350多くの同人誌印刷でよくある線数(例:175線)に対する標準的な目安だから(最終的には印刷所推奨を優先)
モノクロ印刷
(漫画本文)
600 ~ 1200白黒の「点」や「線」を滑らかに表現し、トーンのモアレを防ぐために高密度が必要。

【保存版】用紙サイズ別・必要ピクセル数の早見表

「解像度はわかったけど、結局何ピクセルで作ればいいの?」という方のための早見表です。

※同人誌原稿を作成する場合は下記表の通常の用紙サイズに塗り足しを上下左右に3~5mm程度追加が必要です。不明な場合は印刷所の印刷サイズに合わせたフォーマットを用いるのが無難です。

dpiとpxの計算式ピクセル数(px) = 印刷したいサイズ(inch) × 解像度(dpi)
※1インチ = 25.4mm

※厳密には画像データはppi、印刷はdpiと呼び分けることがありますが、本記事では一般的な慣習に合わせてdpi表記で統一します。

用紙サイズ解像度350dpi解像度600dpi
A4 (210×297mm)2894 × 4093 px4961 × 7016 px
B5 (182×257mm)2508 × 3541 px4299 × 6071 px
A5 (148×210mm)2039 × 2894 px3496 × 4961 px
A6 (105×148mm)/文庫1447 × 2039 px2480 × 3496 px

CLIP STUDIO PAINTは作成時やキャンバスサイズを変更するときにキャンバスの単位を変更することが可能です。

印刷用の原稿サイズを設定するときは解像度を設定した後に単位を[mm]に変更して設定すると簡単です。(よく使用する原稿サイズはカスタム用紙サイズ設定で覚えさせておくと良いと思います。)

クリスタのレイヤー単位変換

※同人誌の入稿は解像度だけでなく、塗り足し・カラーモード(RGB→CMYK)・背表紙幅でもミスが起きがちです。入稿データの必須チェック項目は、こちらにまとめています

Q1. X(Twitter)やPixivに投稿するイラストの解像度は?

A. ブラウザで見るだけなら、dpiは見た目に影響しません。重要なのは「px(ピクセル数)」です。

驚くかもしれませんが、Webブラウザなどのモニター表示において、解像度(dpi)という数値は画質に直接影響しません

  • 1000px × 1000px (72dpi) の画像
  • 1000px × 1000px (350dpi) の画像

この2つは、Web上では同じピクセル数で表示されるため、見た目は同じです。

「Web用は72dpiにしなきゃいけない」というのは昔の目安であり、現在はキャンバスの「ピクセル数(縦横の長さ)」だけを管理すればOKです。

スマホなどの高精細画面できれいに見せるために、表示サイズの2倍(例:スマホで横幅1000pxで見せたいなら画像は2000px)で作るのが主流です。

※ただし、画像をダウンロードして印刷する場合や、一部のソフトで配置する際にはdpi情報が参照されてサイズが変わることがあるため、用途が決まっていない場合は350dpiにしておくのが無難です。

また、無断利用を“完全に防ぐ”ことは難しいですが、印刷や再利用の実用性を下げる目的で、公開用は長辺1500〜2000px程度に抑える運用は「抑止策」として有効な場合があります(見やすさとのバランスで調整してください)。

Q2. フルカラー同人誌(表紙・イラスト集)を作る時は?

A. 「300dpi」~「350dpi」が推奨されることが多いです。

印刷物になると、dpiが画質に直結します。 なぜ「350dpi」と言われるのか? それは印刷所の「網点(スクリーン線数)」に関係しています。

印刷所が提供してくれている同人誌の表紙用のテンプレートは解像度を300~350dpiに設定されています。

【参考】株式会社ポプルス(原稿作成ガイド)https://www2.popls.co.jp/pop/genkou/
【参考】株式会社 緑陽社(クリスタ原稿作成ガイド):https://www.ryokuyou.co.jp/doujin/manual/clip_studio.html

350dpiが必要な理由
  • 一般的な商業印刷・同人印刷では、色の濃淡を表現するために「175線(LPI)」という細かさが使われることが多いです。
  • 綺麗に印刷するには、この線数の「2倍」の解像度が必要というセオリーがあります(175線 × 2 = 350dpi)。
  • これが350dpiが推奨される理由です。印刷所やプランによっては高精細印刷(200線以上)の場合もあるため、必ず利用する印刷所のマニュアルを確認しましょう。

あとで同人誌を作成したり、グッズなどの印刷物にイラストを使用する予定が考えられるのであればデータの容量は重たくなってしまいますが解像度を350dpiに設定をして常に描くようにします。

Webにアップロードするときだけ、画像リサイズのツールを使ったりCLIP STUDIO PAINTで解像度を変更して対応をすれば無駄な作業を行わなくて済むようになります。

同人イベントへ参加する際にポスターの製作が必要であったため、B5サイズ、解像度350dpiで作成をしたカラー同人誌の表紙をA1サイズのポスターに解像度を維持したまま拡大をして印刷をしても見た目が大きく変わるような変化はありませんでした。

※ただし、ポスターは「遠目から見る」前提になりやすく、必要解像度は閲覧距離で変わります。画質は数値上荒くなるが、ポスターは2メートル以上離れて見るため、人間の目には劣化が気になりにくい

Q3. モノクロ漫画(白黒)の同人誌を作る時は?

A. 「600dpi」以上が必須です。(推奨は600~1200dpi)

「カラーより色数が少ないのに、なぜ倍の解像度が必要なの?」と疑問に思うかもしれません。

理由は、モノクロ二階調(白と黒しかない世界)では、「点」の密度でしか階調を表現できないからです。

点の密度を変更することで明るさを表現したり、模様を表現したりしています。

トーンによるドッド
600dpiが必要な理由
  • カラーイラストには「中間のグレー(アンチエイリアス)」があり、境界線を滑らかに見せることができますが、モノクロ漫画原稿にはそれがありません。
  • 350dpi程度の解像度で白黒の線やトーンを描くと、斜めの線が階段状にガタついたり、トーンの網点が潰れてモアレが発生したりします。
  • これらを防ぎ、滑らかな線画や美しいトーンを再現するためには、カラーの倍近い600dpiという高密度が必要になるのです。
アンチエイリアスについての説明

左がアンチエイリアス無し、右がアンチエイリアス有りです。

拡大せずに見ると、どちらも同じように見えますが、拡大をするとアンチエイリアス無しだと白と黒のみですが、アンチエイリアスが有りになっていると白、黒、グレーの中間色が入ってきます。

カラーイラストの場合はアンチエイリアスを有りにすることで滑らかなイラストを描くことができますが、漫画の場合は白黒で描かないと線画がぼやけたようになりハッキリとしない絵になるため注意が必要です。

2値(モノクロ)で入稿する線画はアンチエイリアスは不要なので、CLIP STUDIO PAINTの場合はレイヤーの基本表現色を「モノクロ」に設定することで、アンチエイリアスを気にせず確実に白黒(2値化)して描くことができます。(また、入稿データ書き出し時にはモノクロ2階調を選択すること)

漫画を描いている途中でアンチエイリアスが有りの状態でもモノクロに変更することは可能ですが、中間色の部分も黒になってしまったりするため、思っていた線よりも太くなってしまう可能性はあります。

カラーイラストと漫画を混載したような同人誌を初めて作成したとき、モノクロに設定したつもりがカラーのままだったため、線画を数ページ作成したところで慌ててレイヤーモードを変更したことがあります。

Q4. 原稿サイズを縮小・拡大したら解像度はどうなる?

A. サイズを変えると「実質的な解像度」が変わるため注意が必要です。

例えば、「A4サイズ / 350dpi」で描いたイラストを、「B5サイズ」に縮小して同人誌に使う場合、密度がギュッと詰まるため、解像度は上がります(画質は保たれます)。

逆に、小さい画像を無理やり引き伸ばして配置すると、解像度は下がります。

  • 例: 350dpiの画像を倍の大きさに拡大して配置 → 実質 175dpi に低下(印刷するとボケます)。

原稿を作る際は、最初から「仕上がりサイズ(作りたい本の大きさ)」でキャンバスを作成するのが、トラブルを防ぐ一番の近道です。

素材を切り出すときは素材を可能な限り拡大してから作業を行い、あとで使用するサイズにリサイズを行うと素材を切り出した境界部分をキレイにすることができます。(アンチエイリアス部分が圧縮されるため、境界が見えにくくなる)

まとめ:正しい解像度で入稿トラブルも防ごう

イラストの解像度設定は、「最終的にどこに出すか(Webか印刷か)」で決まります。

  • Web・SNS用:px数が全て(dpiは気にしなくてOK)
  • カラー印刷:350dpi(印刷所の標準)
  • モノクロ漫画:600dpi(線のガタツキ・モアレ防止)

この3つの基準さえ覚えておけば、もう設定画面で迷うことはありません。 正しい数値を設定して、入稿やWebへのアップロードによるトラブルを未然に防ぎましょう。

同人誌づくりをこれから一通りやるなら、企画→制作→入稿→イベント準備→当日までの全体像はロードマップにまとめました(必要なところだけ拾い読みOK)。

この記事を書いた人
Nao

同人イベント参加10回以上、クリスタ愛用者。 感覚的な説明では分からないことが多かったため、「理屈で考えて描く」を大切にしています。 自身の試行錯誤をもとに、イラストや同人活動の「なぜ?」を論理的に解決、効率的に、楽しく創作するヒントをお届けします。

Posted by Nao