【Q&A】クリスタの「ラスター」と「ベクター」の違いは?使い分けと変換・色塗りの疑問を全解説

「レイヤーの新規作成ボタンが2つあるけれど、どっちを使えばいいの?」 「ベクターが良いと聞くけど、ラスターの方が描きやすい気がする……」
結論から言うと、「色塗りやラフはラスター」「線画の清書はベクター」と使い分けるのが、クリスタ(CLIP STUDIO PAINT)の機能を最大限に活かすコツです。
この記事では、2つのレイヤーの「仕組みの違い」をわかりやすいたとえ話で解説し、よくある「変換」や「修正方法(使い方)」の疑問にもQ&A形式でお答えします。
1.ラスターとベクターの決定的な違い
見た目は同じように見えますが、裏側での「線の記録のされ方」が全く異なります。
「モザイク画」か「針金細工」か
- ラスターレイヤー(モザイク画): 方眼紙のマス目を、一つずつ色で塗りつぶしていくイメージです。 マス目が細かいので遠目には滑らかに見えますが、拡大すると四角いドット(画素)が見えてしまいます。
- ベクターレイヤー(針金細工): 点と点をつないだ「しなやかな針金」を置いているイメージです。 形を変えたり、太さを変えたりするのが自由自在。基本的に拡大しても線がボケたりギザギザになったりしにくいのが特徴です。
参考リンク:ラスターとベクター|CLIP STUDIO PAINTお絵かきのコツ
2.どっちを使う?目的別の使い分けリスト
それぞれの特性を活かした、おすすめの使い分けです。
ラスターが向いているのは「色塗り・加工」
主な用途:ラフ、下書き、色塗り、厚塗り
「色を混ぜる」「ぼかす」「フィルタをかける」といった加工は、ラスターの得意分野です。
また、下書きのように「線を何度も重ねて、消しゴムで削りながら形を探る」ような描き方をする場合は、ドット単位で直感的に消せるラスターの方が向いています。
特にイラストのラフ画とラフ色を確認するときはラスターレイヤーを用いるのがオススメです。

ちょっと飛び出した線を消去したい場合や、線が重なって太くなりすぎた箇所などを簡単に削除することができます。(ベクターだと消したと思った場所が制御点の関係で少し元に戻ったりします。)
一発でキレイな線を描くことができればベクターでも良いのかもしれませんが、迷いながら何度も線を描いて消してを繰り返す人はラスターが向いています。
ベクターが向いているのは「線画・清書」
主な用途:線画の清書(ペン入れ)、幾何学模様、枠線
一度引いた線を「後から太らせる」「カーブを微調整する」といった変更が可能です。 また、クリスタ特有の機能である「交点消去」(はみ出しを一瞬で消す機能)が使えるため、効率よく線画を仕上げるのに向いています。
(※ただし、ブラシのかすれ具合や、絵の具が溜まるような複雑なタッチを重視する場合は、あえてラスターで線画を描くプロもいます)
線画で特にベクターレイヤーを使用すると良い箇所としては長く複雑な動きになっているもの、髪の毛や服飾(紐のようなものやリボンなど)を描くときにオススメです。

ラスターで手書きをするのも一つですが、長い距離を一発書きするのは非常に難しく何度も挑戦してようやく出来るという状況になりやすいと思います。
何度も線を引き直す必要があるため、線画を完成させたころには思ったよりも時間がかかったという状況になっているはずです。
ベクターでの線画にすることによって制御点で線の位置を制御することが出来るため、多少は線の位置がずれていても描いた後に直すことができます。
参考リンク:線の調整が自由自在!ベクターレイヤーに描くーCLIP STUDIO PAINT お絵かきのコツ
3.クリスタの神機能!「交点消去」の使い方と消しゴム設定
ラスターには真似できない、クリスタのベクターレイヤーならではの便利機能を紹介します。これを使いたいがために、清書だけベクターにする人も多いです。
はみ出しを一瞬で消すための設定
髪の毛などを描く際、勢いよく描いてはみ出した線を、ワンクリックで消せます。
1.[消しゴム] ツールを選択し、サブツールから [ベクター用] を選びます。

2.[ツールプロパティ] パレットを開きます。
(※ツールプロパティはウィンドウ⇒ツールプロパティで表示できます。)
[ベクター消去] にチェックを入れ、一番右のアイコン [交点まで] を選択します。

この設定で、はみ出した線を少し触るだけで、交わっている点までが自動的に計算されて消えます。

左の画像のように線と線が交差してはみ出した場合でもベクター用の消しゴムを使用すれば交点まで線を簡単に消してくれます。画像の部分だけであれば10秒くらいで仕上がります。
イラストを描くときよりも漫画を描いているときは非常に役立つ機能だと思います。
4.【線修正】線幅修正・ベクター線つまみはどこ?修正ツールの使い方
ベクターレイヤーのメリットは「消す」だけではありません。描いた後から線を修正できるのも大きな強みです。
【線幅修正】線を後から太くする・細くする
「描いてみたら線が細すぎた…」という時も、描き直す必要はありません。
1.ツールパレットから [線修正] ツールを選択します
(場所がわからない場合は、[ウィンドウ]メニューからツールパレットを表示してください)。サブツールから [線幅修正] を選びます。

2.プロパティで [指定幅で太くする] や [指定幅で細くする] などを選び、線をなぞります。
ブラシサイズは線幅を変更する範囲を選択するため設定になります。

これだけで、なぞった部分だけ線の太さを自由に変更できます。

画像の左が線幅の修正前です。右側が線幅を修正した後の画像になります。
必要に応じて線の幅を線画を描いた後からでも修正が可能です。(思った通りの線幅へ修正するための練習は必要)
【ベクター線つまみ】線のカーブを直す
「少しだけ線の位置をずらしたい」という時は、指でつまむように線を移動できます。
1.[線修正] ツールの中にある [ベクター線つまみ] を選びます。

2.直したい線をドラッグして、グイッと動かします。
ツールプロパティの「つまみ加減」と「効果範囲」を調整することで一度に動かせる線の範囲を調整することが出来ます。
つまみ加減:連続している点(繋がっている線)を同時に動かせる範囲を調整
効果範囲:一度に動かす点の範囲を調整

ラスターのように「消して描き直す」手間がなく、針金を曲げるような感覚で修正できます。
5.よくある疑問を解決!ベクターQ&A
ベクターレイヤーを使い始めるときに、よくある悩みや疑問をまとめました。
Q1. ラスターとベクターは後から変換できる?
A. できますが、注意が必要です。
- ベクター → ラスター: 簡単にできます。ただし、一度ラスターにするとベクターの便利機能(再編集など)は失われます。
- ラスター → ベクター: 機能としては可能ですが([レイヤー]メニュー>[レイヤーの変換])、元の線が重なっていると綺麗なベクター線にならず、変な位置で繋がった制御点が大量に発生(点が増えすぎて、線がガタガタ扱いにくくなること)しやすいです。
「線画は最初からベクターで描く」ほうが、結果的に近道になりやすいです。
Q2. ベクターレイヤーで色塗りはできないの?
A. 色塗りには不向きです。
ベクターレイヤーは「線の形」を記録することに特化しているため、色を塗ったり、ぼかしたりするのはやりにくいです。
ベクターレイヤーでも塗れますが、基本は線の編集向けなので、塗りや混色・ぼかしはラスターの方が無難です。
Q3. 「交点消去」ができない(消えない)時は?
A. 消しゴムの設定とレイヤーの種類を確認してください。
- 設定確認: 消しゴムのツールプロパティで「ベクター消去」にチェックが入っていますか?
- アイコン確認: 一番右の「交点まで」が選ばれていますか?
- レイヤー確認: 描いているレイヤーは本当に「ベクターレイヤー(立方体マーク付き)」ですか? ラスターレイヤーでは交点消去は使えません。
Q4. ベクターレイヤーのデメリットは?
A. 「消しゴム」の感覚が少し違います。
ラスターは「消した部分がそのまま消える」感覚ですが、ベクターは「線の形(計算式)を変える」処理が入ります。
そのため、複雑に入り組んだ線をドット単位で細かく削ろうとすると、線が予期せぬ形に変形したり、計算のために動作が重くなったりすることがあります。
「細かく削って整えたい」という人は、ラスターの方が直感的に描けると感じるかもしれません。
6.ベクターレイヤーとラスターレイヤーの感想
※ここからは、私が実際に使ってみて感じたことです。基本のおすすめ(ラフ・塗り=ラスター/清書=ベクター)は変わりません。
私は同人誌で漫画を描くときは、清書をベクターレイヤーにしています。理由は、ベクター用消しゴムの「交点消去」で、はみ出し線を交点まで一気に消せるからです。ラスターレイヤーだと手で消す必要があり、コマ数が多い漫画では作業時間の差が大きくなりました。
一方で、イラストでは線の強弱や、毛先が細くなる表現を重視することが多いです。この場合は、ベクターの交点消去だと狙いどおりに削れないことがあり、私はラスターレイヤーで線画まで描くこともあります。
まとめると、「はみ出し処理を速くしたい(漫画・線が多い)→ベクター」「線の強弱や質感を出したい(イラスト寄り)→ラスター」の順で選ぶと迷いにくいです。
7.まとめ
- ラスター(モザイク画): 色塗りや加工、直感的な修正が得意。
- ベクター(針金細工): 線画の清書、拡大縮小、交点消去や線幅修正が得意。
- 使い分け:迷ったら「ラフと色ぬりはラスター」「清書はベクター」から始めるのがおすすめ。線をあとで直したくなったら、清書だけベクターにすると楽になります。
線画をきれいに仕上げるためには、レイヤーの使い分けだけでなく、キャンバス設定やブラシ設定も重要です。 もっと上達したい方は、以下の記事も参考にしてみてください。













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